2013年8月10日土曜日

March 20, 1991 割れた車窓

199103202019
  CanonNewF-1


ガラスが割れた音に続き、ちょっと女性の悲鳴が上がる。
そのせいで電車は品川駅で長めの停車。
割れたのはドアのガラス。僕の乗っているデッキの、連結を挟んだ隣のところ。
その補修のために長く止まることになった。
電車は通称「大垣夜行」。東京と大垣を結ぶ長距離最終列車。
そのため僕みたいな貧乏旅行から終電まで飲んでいたサラリーマン、ワケあり風なカップルまで様々な最終頼みの人達が駆け込んでいる。
ぱつんぱつん。朝の通勤列車に負けてない。
なので時々ガラスが割れた。

駅員さんは、段ボールで割れた所を補修した。
内側と外側に一枚ずつ。割れた所を挟むように、ガムテープで貼っていた。
ほろ酔いのサラリーマンがそれを見て
「あはは、段ボールだよ。天下のJRさんが、段ボールだよ〜。元国鉄さんがですよ?あはは。」
と笑っていた。
自分で気に入ったみたいで、何度も「天下のJRさんがですよ〜」って笑ってた。
ガラスが割れた時ちょっと重くなった空気が、そのフレーズで少し軽くなった。
みんな少し緊張した表情だったけど、和らいでいるのが分かる。
酔っぱらいもたまには役に立つんだな。そう思った。

1991年、JNRがJRに変わって4年の頃の出来事。

屋久島、宮之浦岳に向かう道中。出だしの出来事。


割れた所はその後、沼津駅だったか静岡駅だったかで、ちゃんとしたガラスがはめられた。
運行中に修理しちゃうんだ。
さすが日本の公共交通機関って思った。

なんとなく、楽しい山旅になるぞ、そう思ったのだった。



(大垣夜行、今は「ムーンライトながら」という名称で、全席指定の臨時列車となっている。青春18切符を上手に使うと、二千三百円と小田原までの運賃+指定券代で、東京から九州の入り口まで行ける。僕が乗った大垣夜行は指定の無い普通列車だったし、青春18切符は二千円で、小田原ではなく横浜までの運賃だけが加算であった。0時を越える駅が、今とは違って小田原ではなく横浜だったから。)

0 件のコメント:

コメントを投稿